• 古事記と日本書紀の違いとは?
  • 文体や神話の内容がなぜ違うのか?

皆さん、学生時代は歴史の授業はお好きでしたか?

歴史が好きでも嫌いでも、得意でも不得意でも「古事記」と「日本史」の名前くらいは聞いたことあるかと思います。

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ところで、このふたつの内容や違いって分かりますか?

ここでは、古事記と日本書紀の内容や違いについてご紹介していきます。

古事記と日本書紀とは

古事記と日本書紀、それぞれいつ・誰が・どのように執筆したものかご存知ですか?

これについて説明できるのは相当歴史好きな方くらいではないかと思います。

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大抵の人は「名前くらいなら聞いたことあるけど・・・」とお答えになられるのではないでしょうか。

そんな皆さんのために、まずは古事記と日本書紀の基本的な情報をまとめていきたいと思います。

 

編纂時期と期間

古事記と日本書紀、どちらも天武天皇からの命令により作成されており、同じ時期に作られたものであることが分かります。

 

先に編纂されたのは古事記で、和銅5年(712年)に太安万侶と稗田阿礼によって編纂されました。稗田阿礼は語り部であり、その言葉を文字に起こしたのが太安万侶ということになります。

 

一方日本書紀は、養老4年(720年)に川島皇子・忍壁皇子を中心とした12人の皇族や豪族・官吏という大所帯で編纂されました。

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ちなみに、古事記は日本最古の歴史書とされています。

このふたつ、編纂にかかった期間は大きく違い、古事記はたった4カ月で書き終えられているのに比べて日本書紀は39年という長い期間を経て完成しています。

 

目的

編纂を命じた天武天皇が天皇に即位される以前に起きた内乱、壬申の乱によって天皇記等の歴史書が消失してしまいました。

 

有力豪族についての歴史書は残されているのに天皇家の歴史書が残されていないという状況から、天皇家の歴史書を作成する目的で古事記と日本書紀の編纂を命じたのです。

 

目的部分での一番の大きな違いは、どこに向けて書かれたものかということです。簡単に言えば古事記は国内向けに、日本書紀は国外向けに書かれたものなのです。

 

古事記は国内に向けて「天皇の」正統性を訴えるもの、日本書紀は国外に「日本という国家の」正統性をアピールするためのものであると理解していいでしょう。ちなみに、「日本」という言葉は日本書紀で初めて使われたと言われています。

 

性格(記述形式)

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このふたつは、編纂した人物が違うので文章の書き方などの性質も大きく異なります。

古事記は物語調であり、和化漢文によって表記されています。和化漢文というのは、平仮名や片仮名がなかった当時日本語の音を感じで表記するという方法のことです。

 

一方日本書紀は起こった出来事を年代順に書き記す編年体という形式を採用しており、漢文によって表記されています。

 

扱われている時代と地域

古事記の方が先に編纂されているということもあり、こちらで扱われている時代は推古天皇の頃までとされています。また、国内で起こった出来事が主な内容となっています。

 

後に編纂された日本書紀では持統天皇の頃まで記載されており、古事記とは異なりこちらでは国内に止まらず朝鮮半島での出来事についても書き記されています。

 

ヤマトタケルノミコト

古事記と日本書紀では、日本神話において有名な「ヤマトタケルノミコト」について記されています。

 

彼の名は古事記と日本書紀それぞれで表記が異なり、古事記では「倭建命」、日本書紀では「日本武尊」というように表記されます。景行天皇の息子であるヤマトタケルノミコトは、その性格も大きく異なって描かれています。

 

古事記では景行天皇にとって恐ろしい息子という観点で荒々しく描かれているのに対して、日本書紀では自慢の息子ということでヤマトタケルノミコトの死を悲しむ場面も描かれています。

 

どちらもヤマトタケルノミコトが父である景行天皇から征西事業を任され、その途中で亡くなるという大筋のストーリーは共通していますが、景行天皇の彼に対しての想いが異なるというところが非常に興味深い点となっています。

 

特徴ごとの違いはなぜ生まれた?

先述した通り、古事記と日本書紀では特徴ごとに違いが明確となっています。ではなぜ、このような違いが表れていったのでしょうか。

ここでは特徴ごとの違いについて、それぞれご紹介していきたいと思います。

編纂期間の差

古事記の編纂期間がたったの4カ月なのに対して日本書紀の編纂期間が39年と圧倒的に長いのには、巻数に明確な差があるからです。

 

古事記は3巻から編成されており、そのなかには112首の歌が出てきます。対して日本書紀は30巻と1巻の系図から編成されており、そのなかには128首の歌が出てきます

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これだけの巻数を編纂するとなると39年かかるのも納得できますね。

しかし歌の数で比べた時、3巻からなっている古事記と比べると巻数が10倍多い日本書紀はわずか16首しか違いがありません。

 

ここから、古事記では非常に多くの歌が詠まれていたということがお分かりいただけるかと思います。

 

性格から見る目的の差

古事記で使われている和化漢文というのは文字通り漢文なわけですが、あくまでも「日本語のニュアンスを残した」漢文なのです。それに対して日本書紀は漢文で記されています

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何故このような差が生まれるのでしょうか。

それは古事記と日本書紀が編纂される目的となった事柄から読み取ることが出来ます。先にも述べた通り、古事記は国内に向けた歴史書で日本書紀は国外に向けた歴史書です。

 

国外に向けたものであるのに和化漢文で記してしまっては国外の相手に伝わりづらくなってしまいませんか。そこから文体の差が生まれたものだと考えられます

 

日本書紀が「正史」といわれる理由

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日本書紀はいわゆる「正史(正しい歴史)」です。

一方古事記はあくまでも天皇家の私的な歴史書とされています。古事記が正史ではないのは、簡単に言うとそこに書かれている事柄の信ぴょう性が非常に低いということがあります。

 

古事記に書かれている事柄は、神話や伝説が非常に多いです。また、ふたつの巻数を比べても分かる通り、古事記に記されている事柄の量は非常に少ないです。

 

そういったことから、古事記は信ぴょう性の低い歴史書とされているのです。そんな古事記とは相反したものであり、正史と呼ばれているのが日本書紀ということになります。

 

「絶対的」な古事記と「相対的」な日本書紀

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日本書紀には様々な異伝が存在し、物語が複数存在しています。

つまり、同じエピソードなのにも拘わらず他の言い伝えも同時に記されているというわけです。

 

一方古事記では本伝のみが書き記されています。なので、古事記の方が読みやすいということも言われていたりします。

 

こういったことから、古事記は絶対的であり日本書紀は相対的であると言えるのです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。古事記と日本書紀と聞くとちょっと堅苦しい史料というイメージがありましたが、ここでふたつの違いについて学んだことで明確な違いも分かり、意外と私たちからそんなに遠いものではないと思っていただけたのではないでしょうか。

同じ「ヤマトタケルノミコト」について表記していても、その性格や捉え方は全く違っていて面白いですよね。

今は私たちのような歴史初心者でも簡単に読めるように書かれている古事記や日本書紀も書店に並んでいます。

 

ですから、これで皆さんも一度は読んでみたいと思っていただけたのではないでしょうか?最後までお読みくださり、まことにありがとうございました!

 

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