• 花魁・帯の結び方を種類ごとに解説!
  • 花魁だと帯を前に結ぶ理由とは?

華やかなイメージがある花魁は、女性にとって憧れの存在です。

特にあの煌びやかな着物と、帯を前に大きく結んだ姿はとても印象的で、思わずため息が出るほど美しいですよね。

花魁の帯の結び方にはいくつか種類があり、一つ一つに意味があるという事を知っていましたか?

花魁ってどんな存在?

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そもそも花魁とはいったい何なのかを知っている方はあまり多くないですよね。

花魁とは位の高い遊女のことを敬称する言葉で、その起源は江戸時代まで遡ります。

 

花魁という言葉がどこから生まれたか、については諸説ありますが、太夫のお付きの妹分が「おいらの姐さん」と呼んでいたことから変化したと考えられています。

 

元々遊女の中で最も位の高い女性は「太夫」と呼ばれておりましたが、吉原で「花魁」という言葉が流行るようになってから全国に広がっていったとされているんです。

 

花魁は派手な着物と前に結んだ帯という斬新な格好で花魁道中を行ない、大衆の目を引いていました。当時の花魁は今で言うファッションリーダー的な存在で、庶民の憧れの的だったのです。

 

俎板帯(まないた)帯とは?

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花魁といえば、胸の前から垂らしたまな板のような…はたまた布団のような大きな帯を想像する方も多いですよね。

この帯の結び方は「俎板帯」(まないた帯)といって、花魁の正装に用いられる結び方です。茶屋まで客を迎えに行く花魁道中には、この俎板帯の正装で向かうのがしきたりとされていました。

 

この時に豪華絢爛な衣装を着て遊郭を練り歩く事が、彼女達にとって一種のステータスだったわけです。俎板帯は胸から垂らした部分の長さが約1メートル、横の長さはだいたい肩幅程であったといいます。

 

大きな帯にはそれぞれ自慢の絵柄が描かれていたようで、人々に見せびらかしたい思いもあったそうですよ。俎板帯の周りには「滝糸」という装飾された糸を垂らして、さらなるオシャレを楽しんでいたようです。

 

花魁道中は彼女達にとって、人々にアピールするためのステージのような場所だったのです。

 

鮟鱇帯(あんこう)帯とは?

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一方で、花魁達の普段着として用いられていた帯が「鮟鱇帯」というものでした。

正装で着用する大きな打ち掛けや俎板帯は人々に見せるためのもので、実際にお客さんを相手するには不向きですよね。

 

花魁は普段着として「胴抜き」というもっと軽くて動きやすい着物を着ていますが、その時に使われる帯を「鮟鱇帯」といいます

 

普通の着物の帯よりは太くて煌びやかなデザインですが、俎板帯よりは扱いやすい長さで、胸の前でちょうど鮟鱇の姿のような形で結びます。

 

その結び方はとても花魁を魅力的に演出していたそうですよ。

 

花魁と太夫で帯の結び方が違う?

 

また花魁も太夫も、どちらも位の高い存在であるというお話をしましたが、その二つは似ているようでちょっと定義が異なります。

主に花魁は吉原で有名な関東地方の遊女を意味する言葉で、太夫は島原が有名な関西方面で最高位の芸妓を称する言葉として使われていました。

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大きな違いとしては、花魁のいる吉原は色を売る遊郭、太夫のいる島原は芸を売る花街という認識があります。

衣装に関しては、どちらも煌びやかな着物に帯を前で結ぶという共通点はありますが、結び方にそれぞれ特徴があります。

 

花魁の帯については、前述にあるように俎板帯か鮟鱇帯が主流でしたが、太夫は胸の前で「心」という字の形に結ぶのが一般的でした。

 

この心の結び方は結びつきが強いため、「簡単には解けない」という太夫のプライドが込められています。太夫は大名などの高官以上でなければ呼ぶことができないくらい、庶民には手の届かない存在でした。

 

しかし次第に、よりポピュラーな花魁の文化へと移行していき、いつの間にか太夫の存在は見られなくなっていったのです。

 

帯を前に結ぶ理由とは?

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普通の着物は帯を後ろで結ぶのが一般的だと思いますが、花魁も太夫も帯を前で結ぶスタイルが特徴的ですよね。

日常生活の中であんなに大きく帯を前に結んでいたらなかなか不便だとは思いますが、どうして花魁の帯はこのような前結びのスタイルが定着したのでしょうか?

 

「一夜妻」という意味が込められている

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実は江戸時代に帯を前で結んでいたのは、何も花魁や太夫だけのスタイルではなかったんです。

前結びは、元はと言えば身分の高い公家の女性などが好んで使っていた結び方でした。

 

しかし一般庶民でも未婚の女性は後ろ結びと決まっていましたが、既婚女性は帯を前で結ぶことがあったのです。

 

想像してみるとわかると思いますが、帯を結ぶときって前に結ぶのは自分でも出来ますが、後ろに結ぶのはちょっと難しいですよね?

 

そのため、未婚の女性は自分で着物を脱ぐことが出来ないように後ろ結びと決められていました

 

逆に、結婚した女性は夫とのコミュニケーションのために自分で着物を脱ぎ着することが許されていたため、前結びをしていたわけです。

 

花魁も自分で帯を結んだり解いたりする必要がありましたから、既婚女性のように「一夜限りの妻」という意味で、前結びを採用していたという説があります。

 

見栄えが良く、目立つため

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そもそも帯は、後ろで結ぶよりも前で結んだ方が明らかに目立ちますし見栄えも良いですよね。

花魁はいかに衣装を豪華に着飾ることが出来るかが、自分自身や馴染みの客の評価を左右していました。いわば、歩きながら宣伝する役割も担っていたわけですね。

 

そのため少しでも派手で目立ちたいものですから、次第に帯は大きく、前で結ぶようになったといいます。大きな帯は、花魁の顔をパッと引き立たせる効果もあったようです。

 

自分をアピールするために必要な「顔」と「自慢の帯」を同時に前に並べることで、人々を魅了しなければならなかったのです。

 

上流社会の女性への憧れ

また先ほども紹介しましたが、帯を前で結ぶ習慣は、元々は上流階級の女性の中で一般的なスタイルとされていました。当時の上流階級といえば、公家や武家、大名家の女性のことをいいます。

 

なぜ上流社会の女性の間で前結びが主流だったのかというと、彼女達の周りには何かと世話してくれる人間がいたからだとされています。

 

大きく前で結んだ帯は、自分で着替える事ができて非常に便利ではありますが、一方で家事をする際には邪魔になってしまうデメリットがありますよね。

 

しかし上流階級の女性は身の回りを世話してくれるお付きの人間がいるため、家事をする必要がありませんから、単純にオシャレを楽しむ事ができたわけです。

 

一般庶民の既婚女性の間でも前結びは見られましたが、これは元々細い帯で気軽にクルクルと結んでいたものでした。ところが、次第にデザインにファッション性がでてきた事で、どんどん太くなっていったといいます。

 

それに伴って実用性が失われていったため、一般庶民の間では前結びは廃れてしまい、上流階級の女性の中にだけ残りました。

 

花魁や太夫が前結びをする理由は、そんな上流階級の女性ならではのファッションに憧れがあったため…と考えられているのです。

 

まとめ

昔も今も、花魁のファッションは人々を魅了し続けています。

我々からみると芸術のように見える豪華な帯の前結びにも、まるでその時代を反映するかのような、たくさんの秘密が隠されていました。

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しかしいつの時代も、オシャレを楽しみたいと思う女性の心は変わりません。

花魁の世界や花魁の帯の結び方が持つ意味を理解することができたら、次はあなたが試してみる番です。

 

実際に花魁の衣装を体験できるところがありますから、あなたも一度花魁気分を味わってみるのは如何でしょうか?