• 武士の情け・意味と使い方を例文で!
  • 言葉の由来も分かりやすく解説 

皆さんは「武士の情け」ということわざを聞いたことがありますか?

おそらくほとんどの方が聞き覚えのあることわざだとは思いますが、その詳しい意味や使い方まで知っている方は意外と少ないんです。

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もしかしたら、今まで間違った意味で使っていたかもしれません。

そこで今回は、「武士の情け」の本当の意味と使い方、また実際の例文から興味深い逸話まで全部詳しくご紹介したいと思います!

武士ってどんな存在?

そもそも、このことわざの意味を理解するには日本特有の「武士」という存在について理解する必要があります。

武士とは身分を意味する言葉ですが、武士といわれている人達は10~19世紀の日本において、主に軍事を担う集団として存在していました。

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ちょうど平安時代から幕末までの間、支配階級にいた人達のことです。

よくお侍さんとの違いがわからない…という方もいらっしゃいますが、お侍さんは武士の中でも特に身分の高い主人に仕える者のことを表す言葉です。

 

また武士といえばチョンマゲに袴姿、腰に差した刀…というあの独特な風貌が特徴的ですよね。

 

当時は平民でも刀を持つことが許されていましたが、二本差しといって腰に大小二本の刀を差すことが許されていたのは武士の身分にある人達だけだったそうです。

 

武士道精神とは?

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また武士という人間を理解するために欠かせないものが武士の倫理観や道徳観の源である「武士道精神」です。

近年では海外でも「ハラキリ」や「サムライ」などの日本語と共に、この武士道精神が広く知られるようになりましたよね。

 

武士道の定義や解釈は様々ですが、基本的には「文武両道に努め、常に自らの命をかけて責任をとる精神である。」というものと認識されています。

 

武士は支配階級であって生産的な立場ではありませんでしたから、生活のためには平民や商人などに年貢や税を納めて貰う必要がありました。

 

その代わりとして、何かあれば人々の平穏な暮らしを守るために、自らの命を持って治めていかなければならなかったのです。

 

そのような理由や儒教的な思想が相まって、「武士道精神を持つ者とは、主君や家族、他人のために常に命をかけて責任を果たさなくてはならない存在」という考えが根付いていったとされています。

 

「武士の情け」の本当の意味とは?

以上の点を踏まえて、早速「武士の情け」ということわざの意味を解説していきたいと思います。

このことわざは一般的に「目上の者が目下の者に、憐れみや温情を与えること」という風に使われています。

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しかし武士の情けにはもっと深い意味が込められています。

始めに武士という存在について解説させていただいた訳は、武士の情けがただの「情け」ではなく「武士の」情けであるということを理解していただくためです。我々が想像する「情け」という言葉と「武士の情け」は同じように見えて、正確には意味が全く異なるわけです。

 

一般的な「情け」とは相手に対して「同情」や「憐れみ」の気持ちをかけてあげることをいいますから、「相手の罪を見逃してあげる」といったイメージがありますよね。しかし本来の「武士の情け」は武士という立場から同じ武士に対する情けのことをいいます

 

したがって深く掘り下げると、ただ単に相手の罪を見逃すとか許すといった意味ではなく、「相手の武士としてのプライドを尊重してあげる」ことが本当の意味での「武士の情け」なのです。

 

このことわざには、先ほど解説した武士道精神が関係しています。武士たる者は常に主君や大義名分のために命をかけて戦う者ですから、場合によっては敵に背中を向けただけで切腹ものです。

 

しかし本来なら処刑されるところを、武士のプライドを尊重して切腹を許す訳です。相手のことを思い遣って、相手の誇りや名誉を尊重してあげる…これが本当の意味での「武士の情け」なのです

 

正しい使い方について

では、実際にどのような使い方をするのが正しいのでしょうか?

わかりやすいよう、いくつかの例文をご紹介したいと思います!

例えば、職場の同僚がリストラにあって会社を辞めなくてはならなくなった場合、彼が退職理由を言わずに気丈に振る舞っているとき。

「彼のためには何も聞かずにそっとしてあげるのが、せめてもの武士の情けだろう。」

 

スポーツの試合などで大きく点差が開いていて、このまま続けていても相手が逆転することはほとんど無い…ということが誰の目から見ても明らかな場合。

「最後まできちんと試合を続けることが、相手チームに対する武士の情けです。」

 

間違った使い方に注意!

一般的には、ただ単に相手の罪を見逃したり許したりすることを「武士の情け」だと思っている方がほとんどです。

しかし本当の意味では、「武士の情けで、相手の借金を帳消しにしてあげる」などといった使い方は正確ではないのです。

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武士の情けにはきちんと相手の名誉を尊重する武士道精神が根っこに存在していないといけません。

しかし、おそらく現代の日本では本当の意味を知って使っている方は、ほとんどいないのではないかと思われます。

 

そもそもどんな由来があるの?

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武士の情けはいったいどんな由来からできたことわざなのでしょうか。

武士は切腹を実行する際には、うしろに介錯人を付き添わせるのが決まりでした。

 

介錯人とは、切腹をした武士がお腹を切ったあと長い時間苦しまないよう、すぐに首をはねる役割を担った人のことをいいます。

 

諸説ありますが、この介錯人を付き添わせることこそが「武士の情け」の由来であるとされています。

 

実際にはこんな使われ方も…

本当かどうか今となっては実証することも難しいですが、一説によると昔の役人がこの「武士の情け」ということわざを都合よく使っていた…なんて話もあるそうです。

 

同僚が賄賂を行なっていることに対して目を瞑ってあげる代わりに、自分にも恩恵を受けていた。それを正当化するために「武士の情け」という言葉を使って誤魔化していた…そんな使い方をされることもあったそうです。

 

武士の情けにまつわる逸話

まさに「武士の情け」ということわざが正確に使われている、有名なエピソードをご紹介したいと思います。

赤穂浪士討ち入りのきっかけ

大石内蔵助を中心としたあの有名な赤穂浪士討ち入り事件の発端となったのが、主人である浅野内匠頭による吉良上野介に刀傷を負わせた事件です。

 

この日、浅野内匠頭は積年の恨みをはらすため家も家臣も領土も全てを投げ打って吉良上野介に切りつけました。しかしとどめを刺す前に、梶川頼照に取り押さえられてしまいます。

 

このときに浅野内匠頭が叫んだ言葉が、「梶川殿、武士の情けにございます!どうか、どうかお放しください!!」といったのが有名なエピソードです。

 

この後吉良上野介はお咎めなしで、浅野内匠頭だけが切腹を命じられます。喧嘩両成敗の時代でしたから、この処分には世間からも厳しい反応がありました。

 

特にこの一件で報酬を手にした梶川に対しては、「武士の情けのない奴だ。」との批判が集中したそうです。

 

まとめ

ことわざ「武士の情け」についての正しい意味や使い方、実際の例文についてご紹介させていただきましたが、如何でしたか?

特に武士の情けは間違った意味を認識したまま使っている方も多いので、本当の意味を知って意外だったのではないでしょうか。

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またことわざには、時代を反映するような昔ながらの由来やエピソードなどがあって非常に興味深いですよね。

きっと、武士や武士道精神を通して日本特有の文化についても興味を持っていただけたのではないでしょうか?

 

これをきっかけに他のことわざについても調べてみてくださいね!

 

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