- オオムラサキの幼虫を飼育するなら
- 姿が似てる?ゴマダラチョウの幼虫との見分け方
とても美しい翅(はね)を持つオオムラサキですが、幼虫の頃の姿が可愛いと話題になりましたね。
そんな影響があってか、オオムラサキの幼虫を飼育したいという方が増えているようです。
チョウになった美しい姿や幼虫の頃の可愛らしい姿で、私たちを楽しませてくれるオオムラサキですが、今では『準絶滅危惧種』にも指定されている貴重なチョウです。
綺麗だから、可愛いから、など簡単な気持ちで飼育するのはおすすめできません。
オオムラサキの生態をはじめ、幼虫の飼育のしかたなどをご紹介していきますが、愛情を持ってしっかりと飼ってあげましょう。
日本の国蝶って知ってた?オオムラサキとは
日本に広く分布しているオオムラサキですが、雑木林に生息していることが多いので、見たことがあるという方も多いかもしれません。
そして、実はこのオオムラサキ、日本の国蝶だってご存知でしたか?
とはいえ、法律やなにかの条例で定められたものではなく、日本昆虫学会が選んだそうです。
朝鮮半島や中国など、日本以外でも生息していますが、国蝶にも指定されていることから日本人にとってなじみのあるチョウかもしれませんね。
オオムラサキの生態
では、オオムラサキの生態についてお話していきたいと思います。
オオムラサキは、チョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの1種です。
日本では、北海道から九州まで幅広い地域に生息していますが、日本にいるタテハチョウ科のチョウの中では最大級の種類になります。
- 分布
日本:北海道から九州各地(南限は宮崎県小林市)
海外:朝鮮半島、中国、台湾北部、ベトナム北部 - 成虫の大きさ:前翅長50~55㎜(翅を広げると10~12㎝)
メスの方が一回り大きい - 翅の表面の色
オス:光沢のある青紫色
メス:光沢のない茶紫色 - 食べ物
成虫:樹液(クヌギ、コナラ、ニレ、クワ、ヤナギなど)
幼虫:エノキやエゾノキの木の葉 - 寿命
約1年
オオムラサキは、日本でも幅広い地域に生息し、適度に管理された雑木林に見られることが多いようです。
かつては、東京都区内の雑木林でも見られたこともありましたが、都市化が進み雑木林が減ってきたために、都市近郊など地域によっては絶滅の危機に瀕しています。
その一方で、山梨県北杜市長坂町では日本でいちばん多いオオムラサキの生息地として知られています。

長坂町は炭焼きが盛んで、原料となるクヌギ林が多く残っているんですって。
また、近くに八ヶ岳高原に流れる水辺にはエノキが多く生えていることや、冬には適度に雪が降って乾燥が少ないといったことから、オオムラサキが多く生息しているそうですよ。
オオムラサキといえば、やっぱり綺麗な翅!
オオムラサキの特徴といえば、成虫になったときの綺麗な翅ですね。
オスは光沢のある青紫色をしていて、とくに内側部分には、黒や紫色に白や黄色の斑点が入っていてとても美しいです。
メスも綺麗な翅を持ってはいるものの、オスよりは劣ってしまいます。
また、面白いことに、生息する地域によって翅の裏の色や大きさに違いがあるそうです。
翅の表面の色は、オスは青紫色、メスは茶紫色をしていますが、裏面は生息する地域によって違い、南の方に生息するオオムラサキは白色、北にいくほどに黄色が強くなってきます。
日本の真ん中あたりの地域に生息するオオムラサキは、白色と黄色が混在してるといいますから、また面白いですね。
大きさは、北に生息してるオオムラサキの方が小型。
また、綺麗な翅の色も閉じていると見ることができないので、翅を閉じていると一見オオムラサキと思われないこともあり、翅を開いてやっとオオムラサキだと気づく人もいるそうですよ。
オオムラサキの飛び方
一般的にチョウの飛び方というと、ヒラヒラと舞うように飛ぶイメージがありますよね。
ですが、オオムラサキの飛び方は、滑空するような飛び方をします。
はばたきが機敏で、飛翔の速度も速く、オオムラサキが飛んだそばにいた人の話では、翅の音が聞こえるくらいだったという方もいるくらい。
翅の大きさもあるだけに、迫力があるのでしょうね。
オオムラサキの成虫の姿が見れるのは夏の短い間だけ
オオムラサキの寿命は約1年ですが、成虫となった姿を見れるのは、夏の間のわずかな期間だけ。
だいたい6月下旬頃から羽化が始まりますが、その間に交尾や産卵を行わなければなりません。

成虫となった姿は羽化してからわずか2ヵ月ほどで、8月くらいには死んでしまいます。
とても綺麗な姿のオオムラサキですが、その姿を見ることができる時間はとてもわずかです。
オオムラサキの幼虫を飼育するなら
オオムラサキの生態もわかったところで、幼虫の飼育についてお話していきましょう。
ただ、安易な気持ちで飼育することは絶対におすすめしません。
オオムラサキは準絶滅危惧種!飼育も難しい
先ほどもお話しましたが、オオムラサキは準絶滅危惧種になっています。
個人的に飼育されている方もたくさんいるようですが、安易な気持ちで飼育することはおすすめできません。
また、蛹(さなぎ)まで育てることも難しく、運よく蛹になってもそこから成虫にするまでも難しい。
つまり、飼育すること自体大変難しいといえます。
これらについて十分に理解してから、飼育することをおすすめします。
オオムラサキの幼虫の期間はどのくらい?
オオムラサキの一生
オオムラサキの幼虫の飼育についてお話する前に、幼虫の期間やオオムラサキの一生についてお話しようかと思います。
オオムラサキの寿命は約1年ですが、孵化したばかりの幼虫は1齢幼虫、そして、脱皮を繰り返すごとに2齢、3齢、4齢~6齢幼虫となり、越冬することになります。
オオムラサキの幼虫期の頃と合わせて、オオムラサキの一生をご紹介しておきます。
- 卵から孵化
- 幼虫期
1齢幼虫
2齢幼虫
3齢幼虫
4齢幼虫
越冬幼虫
起眠
5齢幼虫
6齢幼虫 - 前蛹
- 蛹
- 羽化
- 交尾
- 産卵
オオムラサキの一生はこのようになっています。
卵から孵化
オオムラサキの卵は、直径1㎜位の大きさがあります。
殻は固いキチン質からなり、空気は通しやすく水は通しにくくなっているだけでなく、乾燥しないようになっています。
キチンとキトサンの総称。
エビやカニなどの甲殻類の殻やカブトムシのような節足動物の外骨格、カビや酵母、キノコなどの真菌類の細胞壁などに含まれるムコ多糖。
エノキにの葉に産みつけられた卵は、約6~10日ほどで孵化します。
幼虫期
オオムラサキは、約1年という寿命ですが、そのうちのほとんどを幼虫として過ごすことになります。
越冬する前の4齢幼虫までについて、まずはまとめてみました。
- 1齢幼虫
孵化すると、卵の殻をほとんど食べる
殻を食べることで、エノキの葉を食べることを覚える(葉の真ん中に穴を開けて食べる)
頭の角はなく、背中の突起物もあまり出ていない状態 - 2齢幼虫
1齢幼虫から1週間経ち、1回目の脱皮をして2齢幼虫になる
頭に2本の角、背中には4対の突起物が出てくる
アリに食べられたり、脱皮中に死んでしまうことが多い - 3齢幼虫
2齢幼虫になって20日ほどして2回目の脱皮が行われて、3齢幼虫に。
この頃になると、葉の端から食べるようになる - 4齢幼虫
3齢幼虫を40日間ほど過ごすと、3回目の脱皮をして4齢幼虫になる
腹側が広くなり平べったい体になる
気温が低くなると、食欲が減少し落ち葉の色をからだが同じ色になる
11月上旬頃になると、越冬のためにエノキの木の根元に降りていきます。
やがて、エノキの根元にある落ち葉にはりついて冬を越す、越冬幼虫となります。
越冬幼虫は、5月くらいになるといよいよ越冬から起き、エノキに登り始めます。(起眠という)
この時期の幼虫は、鳥などの天敵から身を守るため、枝の分かれ目でじっとしていることが多いです。
- 5齢幼虫
木に登って20日くらいで茶色の皮から脱皮、5齢幼虫となる
食欲旺盛になり、1日で1㎜以上のスピードで大きくなる - 6齢幼虫
5齢幼虫になってから2週間ほどで脱皮をして、6齢幼虫に
この時期も食欲旺盛で、からだが大きく目立ってしまうため、鳥によく食べられてしまう
からだがだんだん透けてくる
さて、いよいよ、蛹になるための準備に入っていくことになります。
前蛹と蛹
6齢幼虫が25日くらい経過すると、葉の裏に自分で吐き出す糸で台座を作ります。
頭を下にして、ぶら下がって蛹の準備に入るのです。
これを前蛹といいます。
そして、この前蛹が2日続くと、脱皮が始まって蛹となります。
羽化から産卵
蛹になってから15日くらいしてからだが固まると、背中の部分が縦に割れて羽化が始まります。
だいたい6月下旬から羽化の様子を見ることができます。
そして、オスがメスを見つけ交尾をして産卵しますが、産卵が終わると親のチョウは死んでしまいます。
産卵の時期は、7月下旬から8月上旬にかけて、メス1羽で400個くらいもの卵を産みます。
オオムラサキの幼虫の飼育に必要なこととは?
では、つぎに、オオムラサキの幼虫を飼育するのに必要な飼育環境やエサなどについてお話していきます。
- できるだけ自然に近い状態で飼育すること
- エサはエノキの葉っぱを用意する(常に用意できるかどうかも考える)
オオムラサキの幼虫の飼育に必要なのはこの2つです。
自然に近い飼育環境を
オオムラサキの幼虫を飼育する場合、できるだけ自然に近い環境で飼育してあげましょう。
室内だと暖房などで自然の温度とは違ってきてしまうので、できるだけ室外での飼育がおすすめです。
自然に近い環境で飼育してあげることが、ちゃんと育ててあげられるコツになります。
室外で飼育できない場合は?
昆虫や魚などを飼育するプラケースなどを用意してあげましょう。
室外での飼育がベストですから、暖かすぎたりしないように室温にも注意することも大切です。
エサとなるエノキの葉を与える
オオムラサキの幼虫のエサはエノキの葉になります。
飼育する場合には、エサをきちんと用意すること以外、ほかになにか特別なことをする必要がありません。
屋外で飼育する場合
エノキの苗木を購入して、それにネットをかけて脱走対策をしましょう。
エノキを葉を与えるだけでもいいのですが、エノキの葉は水の吸い上げが弱いために枯れやすいという難点があります。
鉢植えであれば枯れる心配もそれほどないうえに、手間もかかりません。
屋内(プラケース)で飼育する場合
プラケースにエノキの葉を入れてあげましょう。
ただ、先ほどお話したように、エノキの葉は大変枯れやすいので、できれば小分けに採取して調達したものをあげるのがいいですね。
オオムラサキの幼虫はどう手に入れたらいいの?
飼育環境が整い、エサとなるエノキの葉の調達も考えたうえで、オオムラサキの幼虫を迎えるようにしましょう。
オオムラサキの幼虫は、捕獲採集をして手にいれられます。

オオムラサキの幼虫を採集しやすい時期は、越冬してから春にかけてです。
この時期を狙って幼虫を採集しに行ってみましょう。
- 春先に採集する場合
エノキの枝の分かれ目を隈なく探す - 冬に採集する場合
エノキの木の下に落ちている葉っぱをめくって探す
春先に採集する場合は、エノキの枝の分かれ目を探すと、木に登っている途中の幼虫を見つけることができる場合があります。
採集する場所の確認を
オオムラサキは国蝶のため、天然記念物に指定されているのでは?と思われる方も多いです。
国の天然記念物に指定されているわけではないのですが、一部の市町村によっては、天然記念物に指定されている地域もあります。
そういった場所では採集できない場合もありますので、採集する場所はどうなっているのか、採集前にきちんと確認しておきましょう。
姿が似てる?ゴマダラチョウの幼虫との見分け方
ゴマダラチョウとは、オオムラサキと同じタテハチョウ科に分類されるチョウのこと。
成虫になった姿や幼虫の頃の姿もオオムラサキと似ているだけでなく、幼虫期にエノキの葉を食べることやエノキの葉の落ち葉で越冬します。
成虫になってからはオオムラサキといっしょに見られることも多いチョウです。
オオムラサキとゴマダラチョウの幼虫の見分け方
オオムラサキの幼虫とゴマダラチョウの幼虫を並べてみると、本当によく似ています。
食べ物も同じエノキの葉なので、オオムラサキの幼虫を採集するときにゴマダラチョウの幼虫を見つけることもあるようです。

見分け方のポイントは、背中にある突起物の数と線です。
- オオムラサキの幼虫
背中にある突起物が4対
背中に少し濃い線が2本 - ゴマダラチョウの幼虫
背中の突起物が3対
背中にはっきりした線はない
背中にある突起物の数と背中にある線があるかないかで、オオムラサキとゴマダラチョウの幼虫の見分けがつきます。
大変よく似ているので、それらしい幼虫を見つけたらじっくりと見て確認してみるといいですね。
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