• オオムラサキは日本で一番強いチョウ?好戦的でもある?
  • オオムラサキはオオスズメバチやヒアリだって食べる?

とてもきれいな翅(はね)を持つオオムラサキですが、スズメバチよりも強くその強さは日本でいちばん強いチョウなのでは?といわれています。

オオスズメバチやヒアリも食べてしまうほど、強いチョウなのでしょうか?

オオムラサキは、日本の国蝶にもなっているとても美しいチョウです。

 

オオムラサキの数は減ってしまい、準絶滅危惧種に指定されていますが、北海道から九州の各地に生息しているので、その姿を自然の状態で見かけることもできます

 

光沢のある青紫の翅を持ち、その見た目からは『強い』というイメージはなかなか出てこないと思います。

 

しかし実は、オオムラサキはあのスズメバチよりも強いといわれているのです。

オオムラサキは日本で一番強いチョウ?
好戦的でもある?

このきれいな姿からは強いだなんて想像つきませんね。

 

そもそも、チョウはヒラヒラと飛んで花の蜜を吸っていて、どちらかというと『弱い』イメージの方が強かったので、『強い』というイメージすら持っていませんでした。

 

では、いったいどのくらい強いのか?とっても気になるところですね。

 

オオムラサキの強さの真相を探る前に、オオムラサキはどんなチョウなのか、少しお話していきましょう。

 

オオムラサキの生態や特徴

冒頭でもお話しましたが、オオムラサキは日本の国蝶に指定されているチョウです。

 

チョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの一種であります。

 

日本では、北海道から九州まで幅広い地域に生息していて、適度に管理された雑木林で見られることが多いです。

 

見たことがあるという方も多いかもしれませんね。

 

オオムラサキの生態
  • 分布地
    日本:北海道から九州の各地(南限は宮崎県小林市)
    国外:朝鮮半島、中国、台湾北部、ベトナム北部

  • 大きさ
    成虫:前翅長50~55㎜、開長(翅を広げた長さ)100~120㎜
    メスの方が一回りほど大きい
  • 翅の色(表面)
    オス:光沢のある青紫色
    メス:光沢のない茶紫色
  • 食べ物
    成虫:木の樹液(クヌギやナラ、ヤナギなど)、腐った果実や動物の排泄物などの汁
    幼虫:エノキやエゾノキの木の葉
  • 寿命
    約1年(成虫になってからは1ヵ月くらい)

オオムラサキの成虫の羽化が始まるのはだいたい6月下旬で、成虫になってからの寿命はわずか1ヵ月くらいになります。

 

それから、お見合いをして交尾をして7月下旬から8月上旬にかけて産卵をします。

 

産卵が終わると死んでしまうのですが、成虫になっても生きられるのはほんのわずかな間だといいます。

 

そして、オオムラサキの大きな特徴といえば、やはり光沢のあるきれいな翅ですね。

 

メスよりもオスの方がきれいな翅をしています。

 

地域によって違う、翅の裏の色や個体の大きさ

実は、このきれいなオオムラサキの翅の裏の色、また、個体の大きさには、生息する地域によって違いもあるといいます。

 

南の方に生息するオオムラサキの翅の表面の明白斑が縮小して一見して黒っぽい印象を与え、北の方に生息するオオムラサキは、明色斑や裏面が黄色っぽいんだそう。

 

また、日本以外に生息するオオムラサキは、翅の裏の濃い色の斑紋が出現した個体が多く見られ、中国・雲南省からベトナムにかけての個体は明白斑がとても発達しているそうです。

 

オオムラサキの幼虫は、5回ほど脱皮を繰り返して大きくなる(脱皮の回数によって一齢幼虫から六齢幼虫まで過程を経ていく)のですが、この脱皮の回数で個体の大きさに違いが出てきます。

 

オオムラサキの幼虫の個体の大きさの違いとは
  • 北海道や東北地方などの寒い地域:三齢幼虫(2回目の脱皮のあと)で越冬する
  • 暖かい地方:四齢幼虫(3回目の脱皮のあと)で越冬する

このように脱皮の回数が1回少ない、寒い地域に生息しているオオムラサキは小型のものが多いといいます。

 

近年では数が減り、今では準絶滅危惧種に指定

適度に管理された雑木林でよく見かけられるオオムラサキですが、以前は、東京区内の雑木林でも見かけることができたそうです。

 

ですが、都市化の影響で雑木林が減ってしまい、都市近郊の地域によっては絶滅の危機に瀕しています。

 

年々その個体数が減ってきているために、準絶滅危惧種にも指定されています。

 

地域によってはたくさんのオオムラサキが生息している地域もあるようで、中でも、山梨県北杜市長坂町は、日本でいちばん多いオオムラサキの生息地として有名と知られています。

 

この長坂町は炭焼きが盛んなため、原料となるクヌギの林が多く残っていて、八ヶ岳高原に流れる水辺には、オオムラサキの産卵場所となり幼虫が食べるエノキの木が多く生えていることも、オオムラサキが多く生息している理由になっているそうです。

 

それに加えて、冬は寒く適度に雪が降って乾燥が少ないということも、理由となっています。

 

オオムラサキの飼育事業を行う自治体も

東京のある自治体では、かつて存在したオオムラサキの住む雑木林を目指して、オオムラサキの飼育事業に取り組んでいる所もあります。

 

雑木林の環境整備の象徴として開始されたそうですが、たくさんのオオムラサキが順調に育てられているそうです。

 

オオムラサキは、どんどん数が減ってしまっているので、そのような取り組みはどんどん行ってほしいですね。

 

オオムラサキの強さはどのくらい?

さて、いよいよ、オオムラサキの強さについてです。

 

スズメバチは、毒を持ち、また、命の危険にさらされることもあり、人間にとってはとても怖い存在ですよね。

 

スズメバチの被害に遭われる方は年間で10~20人といい、スズメバチの活動が活発な時期になるとより被害に遭われる方も増えてしまいます。

 

オオムラサキは、そんな怖いスズメバチにも立ち向かっていくというから驚きました。

 

樹液のある餌場には、スズメバチだけでなくカブトムシなどのたくさんの昆虫たちが集まりますが、そんな昆虫たちをもろともせず、オオムラサキは翅をばたつかせて追い払い、餌場を確保します。

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ちなみに、オオムラサキは、毒も針も持っていないんです。

オオムラサキは縄張り意識も強いそうですが、攻撃力の高いスズメバチさえも蹴散らしてしまうなんて、その強さには圧倒されてしまいますね。

 

羽音がバサバサと聞こえるほど力強く飛ぶオオムラサキ。

 

大きなからだと力強くはばたいたりしつこく追い回したり、そうすることでスズメバチなどほかの昆虫たちを追い払えるのです。

 

スズメバチは毒針だけでなく、強力なアゴを持っているので捕まって噛みつかれてしまいそうですが、オオムラサキの力にはかなわないようです。

 

オオムラサキは好戦的なの?

つぎに、オオムラサキは好戦的なのか?という点です。

 

残念ながらはっきりとした答えをつかむことはできませんでした。。。

 

ですが、オオムラサキのオスは、大変希少も縄張り意識が大変強く、樹木の周囲に縄張りを作り、その縄張りに侵入してきた飛翔体がいたら、それを追いかけることがあります。

 

そのうえ、素早い飛翔能力を持っていますので、しつこく追跡することもできるのです。

 

また、ほかのチョウやスズメバチなどだけでなく、鳥までも追いかけることがあるのだとか。

 

ただ、鳥については、視力があまり良くないので、交尾の時期になるとメスと間違えてツバメなどの小鳥を追い回してしまうこともあるといいますから、間違えて追っている場合もあるかもしれませんね。

 

気性の荒さや縄張り意識の強さなどが、好戦的だと思われてしまう理由なののかもしれません。

 

オオムラサキはオオスズメバチやヒアリだって食べる?

オオスズメバチやヒアリというと、とても怖い昆虫だということはもうご存知ですよね。

 

オオスズメバチは世界でも最大種でもあるスズメバチで、ヒアリは、ニュースなどで耳にしたこともあると思いますが、刺されると命の危険にさらされることもあります。

 

どちらの場合も、アレルギー症状のアナフィラキシーショックで命を落とすことあるのですが、どちらも人間にとってとても危険な存在です。

 

オオスズメバチとヒアリについて、ちょっと解説しておきましょう。

 

オオスズメバチとヒアリはどんな生き物なの?

まず、オオスズメバチからお話していきますね。

 

オオスズメバチとは
  • ハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属の昆虫の一種
  • 分布地
    日本(日本亜種):北海道から九州まで広く分布(南限は屋久島、種子島周辺)
    国外:インドから東南アジア、東アジアにかけて広く分布している
  • 形態
    体長:女王蜂が40~55㎜、働き蜂が27~40㎜、オス蜂が27~45㎜
    頭部はオレンジ色、胸部は黒色をしており、腹部は黄色と黒色のしま模様
    羽は茶色
  • 女王蜂や働き蜂(メスのみ)に毒針(産卵管)があるが、オスにはない

日本に生息している蜂の中でも最も強力な毒を持っているうえに、攻撃性も非常に高いです。

 

つぎにヒアリです。

 

ヒアリとは
  • 南米大陸原産のハチ目アリ科フタアシアリ亜科に属するアリの一種
  • 分布地:アメリカ合衆国、中国、オーストラリアなど太平洋周辺の国々に移入
  • 形態
    体色は赤茶色、もしくは赤褐色色
    働きアリは多型でさまざまな大きさが存在している

  • 主にアルカロイド系の毒と強力な針を持っている

ヒアリは、世界の侵略的外来種ワースト100選定種で、特定外来生物にも指定されています。

 

南米原産のアリなので、本来は日本にはいないはずなのですが、2017年日本で数回発見され大変なニュースにもなりました。

 

中国から貨物船で運ばれてきたコンテナの中など、海外から運ばれた荷物の中に混入していたようで、幸い軽症で済んだものの被害に遭われた方もいらっしゃいました。

 

では、人間がヒアリに刺されてしまうとどうなるのでしょうか?

 

ヒアリに刺されるとどうなるの?
  • 軽度の症状の場合:痛みやかゆみ
  • 重症の場合:体質によりアレルギー反応やじんましん
  • 命の危険があるのは、アレルギー症状の中でも、アナフィラキシーショックが起きる場合

ヒアリに刺されると命を落としてしまうというイメージを持っていましたが、そこまでではないものの、殺人アリとも呼ばれることもあるほどですから、危険なアリには変わりありませんね。

 

オオムラサキはオオスズメバチとヒアリを食べる?

調べてみたところ、オオムラサキはオオスズメバチもヒアリも捕食することもないようです。

 

オオムラサキの食べる物
  • クヌギやナラ、ヤナギ、コナラやニレなどの樹液
  • 腐った果実や動物の排泄物などの汁

先ほど冒頭でもお話しましたが、オオムラサキは食べるというか、正確には吸うことになりますが、これらを好んで食します。

 

そもそも、オオムラサキなどチョウの成虫は、口がストロー上になっているので、吸うことしかできないということになりますね。

 

もしかしたら、スズメバチたちを蹴散らしてしまうほどのオオムラサキの強さから、スズメバチやヒアリをも食べるというイメージがついてしまったのでしょうか?

 

とてもきれいな見た目からは想像できないような強さを持っているオオムラサキですが、チョウの中でいちばん強いといわれる意味がよくわかりました。

 

毒を持つスズメバチさえも蹴散らしてしまうその強さ、勇ましくかっこよささえ感じてしまうほどです。

 

成虫になってから寿命が尽きるまでの期間も1ヵ月ほどと短いので、その短い中で子孫を残していかなければいけませんから、だからこそ、そんな強さを持って生きなければいけないのかもしれませんね。

 

オオミズアオについて