人魚の由来と聞けば、多くの方が「マナティ」の姿を思い浮かべるのではないでしょうか?
しかし、「ジュゴン」という説もあると言われています。
特に、人魚となると、クジラやアザラシなども想像してしまいそうですが、どんな動物がモデルとなっているのか検討がつかないという方もいると思います。
ここでは、人魚のモデルがマナティという動物であることについて、また、人魚伝説の由来についてご紹介したいと思います。
「ジュゴン」と「マナティ」の違いについて
海に生きる「ジュゴン」と「マナティ」は、ゾウ二近い動物であると現在では認識されている為、その2種がどうして人魚伝説が生まれたキッカケとなったのかが不思議です。
そんなジュゴンとマナティですが、一体どんな違いがあるのでしょうか?
ジュゴン
ジュゴンは、体長3m、体重は450kgほどあります。
身体の色は全体が灰色になっていて、お腹の部分は少し白いといった体色です。
ジュゴンの全身はとても滑らかな皮膚で、とても短い毛でおおわれているのです。
生息地は、熱帯や亜熱帯の浅海です。
紅海やペルシャ湾、インドシナ半島やボルネオ島、パプアニューギニア、ニューカレドニアといった広範囲に生息しています。
ジュゴンは草食動物に分類され、食べるものは海底に生える海藻が主食です。
その為、ジュゴンの口は顔の下の方についていて、海底の海藻が食べやすいつくりになっているのです。
聴覚が優れている為、遠く離れた船のエンジン音までも聞く力を持っています。
マナティ
マナティは、体長390cm、体重1500kgととても大きく、ジュゴンよりも圧倒的に体重も重い動物です。
マナティの全身の皮膚は海苔やフジツボがついていて、住む場所もジュゴンとは異なり、河川や湖、また沿岸に生息しています。
基本的には海水域に生息しています。
しかし、アマンゾンマナティについては淡水域に生息しています。
マナティは、ドミニカ共和国やキューバ、トリニダード・ドバコを拠点として生活しています。
マナティの食べるものは、海藻や植物です。海底だけではなく、水辺に生える植物なども食べる為、口は上の方についているのです。
ジュゴンとマナティはどう見分ければ良い?

ジュゴンンとマナティには明らかな違いがあります。
まず明らかな違いとしては、尾びれの形です。ジュゴンは尾びれがとてもキレイな三角形をしています。
一方でマナティの尾びれは丸みのあるうちわ型になっています。
そして、2種の手の指先に注目してください。
マナティには爪があり、ジュゴンには爪がありません。
そして、食べ物の違いとしては、ジュゴンは海底に生える海藻を食べています。
マナティは海面に浮く水草も食べ、かつ、水辺に生える植物なども食べているのです。
食べる物の違いや身体の特徴については2種に異なる点はありますが、どちらもしっかりとした潜水能力を持っている為、水の中を自在に動くことができます。
ジュゴンとマナティはどうして人魚のモデルになったのか
ジュゴンは16世紀に初めて発見された動物です。
その当時、実にそれ以前から人魚伝説は生まれていたのです。
ジュゴンとマナティは、見た目にはゾウのような身体つきをしていますが、水の中を尾びれを上手に使って泳ぐことができることを理由に、人魚のモデルになったと考えられているようです。
どちらもふくよかな体型なのでとても人魚のモデルだとは信じ硬い部分もありますが、同じ哺乳類という点を考慮すると、ジュゴンやマナティはより人間に近いと言えるのかもしれませんね。
そして、実際に人魚伝説になる動物はジュゴンとマナティのどちらか・・・?と言うと、それはジュゴンの方なのだそうです。
ヨーロッパにおいて初めてジュゴンを発見したポルトガルの海賊が、「これは本物の人魚だ!」と伝えたことが人魚伝説と結びつき、現在の人魚のモデルという認識がなされるようになりました。
ジュゴンの身体は大きく、どっしりしていてやっぱり人魚とは程遠いモデルでは・・・?と思ってしまいます(笑)
ジュゴンが人魚のモデルとなった伝説
古代ローマ時代にまでさかのぼり、この時代にはすでにマナティが存在しており、それとは別に「人魚」と呼ばれる動物が存在していたと考えられていたのです。
「海には人魚という生き物が住んでおり、身体の半分が人間で、その半分が魚の形をしている」という伝説が、実に日本にもあったのです。
人魚伝説のモデルとなっているのは、東洋においてはジュゴンがそれにあたり、西洋においてはマナティがそれにあたるとしての説が伝わっています。
それでも、海の生物としては、イルカやウミガメも存在します。どの生物が人魚であってもおかしくはありません。
これは、大航海時代に、船乗りは長期に渡り女性とセックスすることができない為、動物のメスを代用したことが起源であるとも言われているのです。
ジュゴンは大人しいかつ安全な動物であることから、その代用としてジュゴンが選ばれたのかもしれません。
他にも、人魚のミイラが滋賀県の寺に現在も残されています。これについては、特殊な技術で作られた合成品であるとも言われています。
ジュゴンやマナティが自身の子供にお乳を揚げる様子が人間と同等に見える為、それが人魚のモデルにもなったのではという説が強く残っているのです。
人魚伝説は、ある時を境として、人魚がジュゴンであると認識され、定着したようです。
ジュゴンの食事について
ジュゴンは偏食する動物として知られています。その為、アマモやアジモといった海藻しか食べない動物なのです。
ジュゴンの中でも、特にたくさん海藻を食べる個体については、1日に30kg以上もの海藻を食べます。
特に野生のジュゴンについては、1日過ごす中のほとんどが食事に費やされているというのです。
それほど多くの食事を行わなければならないともなれば、相当な距離を移動するものと思われます。
そして、日本においては、鳥羽水族館にて飼育されているジュゴンが毎日食べる海藻については、韓国から空輸で購入しています。
実に1頭あたりが消費する海藻の量はすごい量であることを考慮すると、1頭あたり年間1800万円もの餌代が必要となってしまうそうです。
一方でマナティは、海藻以外にもレタスなどの野菜も口にする為、飼育はまだ容易な方だそうです。
しかし、ジュゴンについては餌付けもかなり難しく、水族館がジュゴンを飼育するというのは非常に難しいことであると言われているのです。
それに、結果的に野生のジュゴンについては、餌となる海藻がなくなると、もう命を断つしかありません。
まとめ
いかがでしたか?人魚のモデルとなったのはマナティなのか?また、人魚伝説の由来についてご紹介しました。
人魚のモデルとなったのはマナティなのか。それともジュゴンなのか?といったような説が古代ローマ時代から飛び交っていたようです。
そんな中、実際には、ジュゴンが子供にお乳を与える姿が人間の親子の姿によく似ているからという理由が考えられます。
人魚のモデルとなったのはむしろマナティではなくジュゴンなのではないかと言われていることが分かりました。
私達からすると、マナティもジュゴンもどちらも大きな動物であり、ぼってりと大きな身体をしている為、とても人魚としては見ることができない。
むしろ想像もできないのですが、実際にはジュゴンがそのモデルになるんですね。
でも、近年では海水域のみならず淡水域でさえも汚染されていう時代である為、ジュゴンが食べる海藻も激減していくのではないかと不安も募ります。
食べるものが決まってしまっているジュゴンなだけに、水族館での飼育もとても難しいようです。
そんな実態も知らなかった為、今後水族館へ行く時は、ジュゴンの生態についてしっかりと観察してみたいと思います。
人魚・ジュゴン・マナティについて