- 焼畑農業のメリットとデメリットって?
- 焼畑農業ってどんな農業なの?
漢字で書くと焼畑農業ですが、これは「やきはたのうぎょう」と読みます。
なんとなくイメージとしては畑を焼いているというシーンを想像してしまうので、農作物が作れるとは思えないのですが・・・。

焼畑農業とは、どんな農業のことを言うんでしょうか?
焼畑農業の仕組みや意味、それにメリットやデメリットについてご紹介させていただきます。
焼畑農業のデメリットは?
焼畑農業にはいくつかのデメリットがあります。
っと、その前に焼畑農業について簡単にご説明させていただきますね!
焼畑農業ってどんなもの?
一言で言うと、森を焼いてそこから出た灰を肥料にして畑を作るという、原始的な農業のことで、主に熱帯地域や温帯地域で昔から行われている農業です。
数年作物を作ると土地がやせてしまうので、今度は場所を移動して別の場所で同じように森を焼いてまた畑を作る、という作業を繰り返します。
これが焼畑農業です!

っていうことは森を焼いちゃうっていうことですよね。
森を焼くっていうと野焼きを思い出しますが、どう違うのでしょうか?
焼畑農業と野焼きの違い
野焼きとは冬の間に落ちてたまった枯葉や枯れ草などを燃やすことで、肥料として使うことです。
越冬している害虫駆除や、枯れ草を一斉に燃やすことでまた元気に生えてくるという効果もあります。
野焼きの大きな目的は「リセットと再生」です。畑を作るための森を焼く焼畑農業とは、目的そのものが違うようですね。
日本にはこんな野焼きがあります。
- 奈良・若草山の山焼き
- 阿蘇の野焼き
- 別府市の扇山火まつり・十文字原の野焼き
- 渡良瀬遊水地の葦焼き
- 大室山の山焼き
- 秋吉台の山焼き
- 房総の野焼き
- 仙石原の山焼き
- 平尾台の野焼き
日本では森林法によって勝手に野焼きを行ってはいけません。
過去にも死亡事故が起きていて、野焼きをするには市町村長の許可が必要になり、違反すると罰金刑などが課せられます。
焼畑農業の問題点
このように焼畑農業とは、森林を焼いてそこから出た灰を肥料にしてそこに畑を作っておこなう農業です。

どんなデメリットがあるのですか?
実は多くの国では焼畑農業は禁止されているんです。
中国からのPM2.5や黄砂が日本まで飛来するように、風に乗ってやってくものに国境はありません。
焼畑農業を許可している国だけの問題ではなく、隣接する国にも被害が及ぶ恐れがあります。
例えばこんな被害です。
煙
煙を吸い込むことで呼吸器などに障害が起きたり、煙で視界が悪くなり、道路や空港などで混乱が生じます。
火災
日本でも今まで多くの火災が発生しているように、状況によっては大きな被害がでることもあります。
それだけ自然をコントロールするのは難しいということですね。
火災によって、延焼以外にも水害や人災へと広がることもデメリットのひとつです。

なんか、悪いことばっかりじゃないの?
いえいえ、ちゃんとメリットもあるんですよ!
焼畑農業のメリットは?

そもそも森林を焼いた後の灰って、肥料としての価値があるのでしょうか?
草木灰(そうもくばい)について
肥料として販売されているほど、効果のある肥料なんです。
草木灰は落ち葉や枯れ草などを焼いた灰のことをいいます。
石灰やカリウム、それにリン酸やケイ酸などが主成分で土をアルカリ性にする働きがあり、このような効果が期待できます。
- アルカリ性に傾くことで微生物が活発に活動して害虫や病原菌の予防になる
- 主成分のリン酸は果実の育ちを良くする
- 主成分のカリウムは球根や根を大きくする

なるほど、いろいろな効果があるんですね!
では焼畑農業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
焼畑農業のメリットってなに?
メリットのひとつが、上記にあるように肥料がつくれることです。他にはこんなメリットがあります。
経費削減
森林や雑木林を農地に利用するには、木を伐採したり草むしりをする必要がありますが、その労力をカットすることができます。
広範囲にわたり木を切ったり除草をするとなると、かなりの時間と労力が必要ですが、焼畑をすることであっという間に整地ができます。
土壌改良
焼土すると窒素組織が変化を起こし改良されたり、種子の活性化を促す効果もあるようです。
整地にするためのコストカットや時間短縮、それに土壌を良くするメリットがあるんですね♪
メリット、デメリットそれぞれありますが、次に焼畑農業についてもう少し詳しくご紹介します。
焼畑農業の仕組みは?
焼畑農業とは、伝統的な昔からある農業です。なんとなく、畑を作るために森を伐採してしまえ! 的なイメージを持った方も多いかもしれません。
しかしんがら、本来は畑として利用して栄養分がなくなった土地を蘇らせ、何年かかけてまた再生させるというサイクルで行われるもので、もともとは熱帯・温帯地域で発達した農業なんです。
アフリカが発祥?
焼畑農業はアフリカが発祥といわれていて、現在ではアフリカの他にもアジアやオセアニア、サバナ地帯などでも営まれています。
土地に栄養が少ないこの地方では、最もやりやすく効率的な農業なので発達したようです。
焼畑はだいたい2〜3年くらいしか栄養がもたないので、畑としての利用価値がなくるとその後何年か休耕しなければなりません。
そしてまた土地に栄養が戻ると畑として利用する、というサイクルを繰り返していくので、計画的に行う必要があります。
アフリカでは食用とされる穀類、イモ類はほとんどこの焼畑農業によって栽培されています。

他の作物は作らないの?
そうなんです!最近では食料よりも経済効果の高いコーヒーやカカオなどを多く作る傾向にあり、量も増えていてかつての数十倍ともいわれています。
土地が回復するまで15年以上もかかるといわれていて、このままいくとどんどん土地が失われていく懸念があります。

土地を回復させる方法なないの?
土地を回復させるには休ませることが必要です。でも、それだとその間農作物は採れないことになってしまいますね。
それを回避する方法が発見されました。それは作物のローテーションです!
作物のローテーションとは?
このローテーションは輪栽式(りんさいしき)や、ノーフォーク農法と呼ばれるものです。
18世紀にヨーロッパで始まった農法で、同じ畑で違う作物を育てることで、一年中畑を活用できるというものです。

大麦→クローバー→小麦→カブ、イモといった具合に繰り返します。
カブなどは痩せた土地でも栽培でき、クローバーなどの牧草を間に入れることで土地を回復させます。
こんな方法を取り入れながら、焼畑農業は発達してきたんですね。
こんな国で行われている
現在焼畑農業が行われている国はたくさんありますが、ダントツで多いのがブラジルです。
続いてインドネシア、コロンビア、ミャンマー、メキシコ、エクアドル・・・などがありますが、どれもブラジルに比べると少ないです。
ブラジルの焼畑農業の面積はおよそ8万平方キロメートル。

よくわからないので何かに例えてください。
そうですね。8万平方キロメートルといえば・・・東京ドームで比べてみましょう。
東京ドームだとなんと170個分!もっとわからなくなりましたね(笑)だいたい北海道と同じくらいの面積なんです。
でっかいど〜ほっかいど〜っていうくらい大きな北海道ですが、それだけの面積で焼畑農業がアフリカで行われているんですね。

さて、それでは日本の焼畑農業はどのような歴史があるのでしょうか?
日本の焼畑農業について
実は日本では縄文時代から焼畑農業が行われていたようです。
1897年に制定された森林法により、新しく焼畑農業を作ることが制限されてしまって衰退していきました。
それでも1940年代には11万戸もの農家が営んでいたそうですが、1950年を過ぎた頃からどんどん衰退していき、現在ではほとんどこの農法は使われていません。
日本では日照条件などにより「春焼き」と「夏焼き」に分けられ年ごとに適した作物を植え、だいたい4〜5年をめどに一旦畑としての役目を終えます。

役目を終えた土地はどうなるの?
次に土地が再生するのは10〜20年くらいと、実に長〜〜〜い期間待たなければなりません。
そして土地が回復するとまた焼畑をして農地として活用します。
ザックリいうと、5年畑として使っても、そのあと10年から20年は休ませなければならず、あまり効率が良いようには思えませんよね。
でも大丈夫!
何箇所にも焼畑農地があるので、計画的に土地を使っていけば土地がなくなっちゃう! っていうことはありません。

どんな作物を作っていたの?
代表的なものはソバやトウキビ、マメ類やイモ類、それに大根やカブなどです。
焼畑をした1年目にはソバを作ることが多いそうで、焼いたばかりの灰に種を蒔くことで、手をかけずに育成できたそうです。

さて、現在日本で焼畑農業は行われているの?
答えはイエスです!
例えば石川県白山麓では根菜類を、山形県鶴岡市には数十軒の農家によって行われる「焼畑ロード」と呼ばれる地域もあります。

それは「美味しいから♪」。
焼畑ならではの肥料により素材の味を引き出す効果があり、その味に全国のファンがいるそうです。
山形で焼畑農業により古くから作られていた作物と伝統料理を受け継ぐ人たちのドキュメンタリー映画があります。
「自主上映会を上映しませんか? 」って募集しているようです。
焼畑農業の環境問題について
最大の問題は二酸化炭素による地球温暖化の問題です。
樹木を燃やすことで大量の二酸化炭素が発生、地球温暖化に拍車をかけているといわれています。
確かに二酸化炭素は発生しますが、その後の継続する農業でできる農作物は二酸化炭素を吸収するので、一般的にいわれるほど二酸化炭素の量は多くないと考えられます。
また亜熱帯地域には二酸化炭素の吸収がものすごく高いモリンガという木があり、二酸化炭素の排出にも貢献しています。
ですが森林を焼いた後ほとんど農業をしなかったりすると、そのまま二酸化炭素を放出し続けることになります。
そして思わぬ延焼で必要以上の森林を焼いてしまったりすると、地球からクレームがくるレベルの二酸化炭素を放出することになり、現在でも問題視されています。
今後の問題点とは
最近手っ取り早いこの焼畑農業が新しい農業事業者によって増えているそうです。
土地が回復するまで待たずに農業を続けることで、土地は本当の意味で死んでしまいます。
ですが食糧難という現実があり、国で規制をしてもなかなか規制しきれない現実があります。

解決策はないの?
今後の取り組みとしては、痩せた土地でも技術や技法によって作物がたくさん作れるような指導をすることが求められます。
強引な農地の開拓をすすめるのではなく、違った方法で農作物を作れる農法が必要です。
焼畑農業と環境破壊の問題について2011年に出版された本が当時話題となりました。
農学者であり、地球環境学研究所名誉教授の佐藤洋一郎さんが監修した「焼畑の環境学 いま焼畑とは」です。
農業と環境などについて総合地球環境学研究所で行われたプロジェクトの研究について書かれたものです。
国際農林業協力協会編集のこんな本もあります。焼畑農業の今後について考える興味深い本です。
焼畑農業の意味は?
焼畑農業は、森林を焼いてそこから出た灰で畑を作り、その畑が痩せてしまったらまた別の森林を焼いて・・・を繰り返します。

実はこの仕組み、ある用語として使われているんです。
それは、ビジネス用語です。
焼畑商業とは
ある社会問題のことをこのように呼んでいます。
使えなくなった土地を焼き払い、そこに発生した灰を肥料としてまた畑として利用するという焼畑農業になぞらえたものです。

具体的に説明してください
そうですね。例えば近隣に強敵となるライバル店舗ができたり、交通事情などにより売上が減ったとします。
そうした場合、売上が見込めなくなった店舗を閉鎖しまた別の場所に出店する、というやり方を繰り返す大型店の出店方式を比喩した用語です。
大型店は多くが借地でリース形態をとっているため、このようなことが簡単にできる仕組みになっているんですね。
これにはいくつかの問題点があります。食料品店はなくなってしまうと困る住民がいます。
近くの住人は買い物難民となり、さらにはそのお店が目当てで引っ越ししている人がいるかもしれません。
特に従業員などに多いケースではないでしょうか。
住民や地域のことはそっちのけで、一人勝ちを目指すべく勝手に店舗を移動させるやり方は、やはり非難の目を浴びても仕方がないと思います。
こんな出店方式が商業用地の使い捨てと捉えられ、焼畑農業になぞらえて焼畑商業といわれているんです。

上手いことをいいますね。
企業のイメージも悪くなると思うのですが、この焼畑商業は続けられています。
焼畑農業の比喩
焼畑商業も焼畑農業の比喩ですが、ビジネス用語には他にもこんな使われ方をしています。
多分もう会うことのない客だから、といった理由などでおこなうちょっと悪質なビジネススタイルのことです。

具体的には?
例えば家の解体です。一般的には家を解体するなんて、一生に一度あるかないかですよね。
見積もりの段階では一番安かったが、仕事が雑で周りから苦情が来たり、下手をすると道路や塀などを破損させて知らんぷりするというケースもあるようです。
逆に家を買う場合にも起こりうることです。
耐震偽造が良い例ですが、欠陥マンションなどを知ってて売り、すぐに販売会社が清算されてしまうというケースです。
また車検なども心当たりはありませんか?
交換部品など必要以上に費用がかかる業者もあり、トラブルも多いようです。

どうも焼畑農業の比喩には悪い意味が多いようですね(笑)
それもこれも二酸化炭素を大量に排出する悪い農業、というイメージもあるのでしょうか。
農業そのものは再生ありきの素晴らしい伝統農法なのに、ちょっと残念な気がします。
焼畑農業を英語でいうと?
っていうそうです。
google翻訳では「スラッシュ・アンド・バーン農業」って訳されましたが・・・(笑)
エキサイト翻訳とweblioではきちんと「焼き畑式の農業」と丁寧に訳して頂けました。
ひとつひとつの単語でみてみました。「slash」には切る、振り回す、切り下げる、大改訂を加えるといった意味があります。
「burn」は燃えるですね。そして「agriculture」は農業です。
「slash-and-burn」となることで「焼畑式」という意味になるそうです。

では日本語で翻訳をしてみると?
googleでは「Shuffle farming」となり、シャッフルする農場、ということでしょうか。焼畑農業の意味はきちんと理解しているようですね。
次にエキサイトでは「Fire agriculture」燃える農場と、そのまんまで訳されてしまいました(笑)
翻訳サイトも得意な分野と不得意な分野があるようです。ということで、焼畑農業に関するプチ情報をお届けさせて頂きました♪
まとめ

今回は焼畑農業について深く掘り下げてみました。
日本では食料の大量廃棄が問題となる一方で、アフリカでは食料難によりむやみやたらに森林が焼かれているという事実があります。
なんとかグローバルに解決できる方法はないものでしょうか?
農業・農家について