• カマキリに寄生するムシがいる?
  • カマキリに寄生したハリガネムシの出し方は?

小さいころに虫捕りをしてカマキリで遊んだり、カマキリを飼っている人なら「ハリガネムシ」を見たことがあるのではないでしょうか。

ハリガネムシは、その名の通り「針金」のように細くて長い虫です。

カマキリに寄生することで有名ですが、どんな虫なのかはあまり知られていません。カマキリからくにゅくにゅと出てくるのを見た人もいると思います。

寄生虫って、他の生物に寄生して生きる虫ですから、姿を見せることはめったにないですよね。

 

今回は、そんな未知の生物である寄生虫のハリガネムシを詳しく調べてみました。

カマキリの寄生虫「ハリガネムシ」出し方は?

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カマキリに寄生するハリガネムシはご存知ですか?

ハリガネムシの出し方の前に、ハリガネムシについて特徴などを説明します。

 

ハリガネムシってどんな虫?

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まずハリガネムシってどんな虫なのでしょうか。大きさや長さや、どんなところにいるのかなどを紹介します。

 

大きさや長さは?
  • 数cmから1m
  • 直径は1~3mmで、本当に針金のような細長い体。

ハリガネムシの長さは種類にもよりますが、そんな長い虫がカマキリの中に入っていると思うと、ちょっと気持ち悪いですね。

 

ミミズなどと違って伸縮性がないため、のたうち回るような動きをするのが特徴です。

 

ハリガネムシの体には体節がないんです。ですから、クネクネした動きしかできません。そして体の表面は、いわゆるキューティクル、角皮で覆われていてツルツルしています。

 

キューティクルなんて、髪の表面を覆っているというイメージですが、実はハリガネムシの体にもあるんですね。

 

乾燥すると、針金のように硬くなってしまうそうです。

 

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そこから、「針金虫」という名前がつけられたのです。

 

ちなみに一度乾燥しても、また水をやると元にもどって動き出すそうですよ。直径1~3mmしかない体ですが、その中にきちんと内臓を納める器官である体腔があるんです。

 

本当に、生き物って不思議ですよね。

 

また、どうしてこういう生き物が創られてたのか・・・未知の世界はまだまだいっぱいあるんですね。

 

ハリガネムシの種類は?

こんな不思議生き物のハリガネムシですが、実は世界で記録されている種類は、なんと326もあるのです。

実際には2000種類以上もいると言われています。

日本では、2014年時点で14種類が記録されています。

 

長くて細いだけの虫で、種類があるのかと思いますが、意外や意外ものすごく多いですね。

 

ハリガネムシの色でいうと、黒、こげ茶、薄茶、茶色、灰色、白などといろんなものがあるみたいです。緑色や黄緑色のハリガネムシなんてのもあるみたいですよ。

 

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種類によって、色や長さが違ってくるんでしょうね。

 

触ってみるとすべすべしているもの、ざらざらしているものもあるようです。

 

ハリガネムシを引っ張ってみたという人の話では、引っ張って伸ばした所は、折り曲げまくったプラスチックのように白くなってしまうということらしいです。

 

引きちぎるのには、そうとうの力が要るとのことです。針金みたいですが一応生き物なので、引きちぎると考えただけでも怖いですよね。

 

水槽に入れると、ゆらゆらと動くそうです。その動きを見ていると飽きないという人もいますので、ペットとしても可能性があるのでしょうか。

 

ハリガネムシにオス・メスがあるの?

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もちろんハリガネムシにもオス・メスは存在します。

川の中でオスとメスがお互いに巻きあって、オスが精子が詰まった精胞を出して、それをメスが吸い込む受精を行うことがわかっています。

メスは、その後糸くずのような受精卵を大量に水の中に生み出します。それが1,2ヶ月経つと卵の中でイモムシのようなものになります。

川の中でオスとメスがどうやって相手を探し当ててるかは、まだわかっていないそうです。そこも神秘的な生物の習性なんでしょうね。

 

このイモムシも、また不思議な作りになっているんですよ。イモムシは先端に小さなノコギリみたいなものをつけてます。

 

そして、このノコギリを出し入れすることができるんです。

 

この状態で、川の中の水生昆虫に取り込まれると、ノコギリで腸管の中を掘り進んでいくのです。腹の中にたどり着くと「シスト」と呼ばれる状態になります。

 

「シスト」とは

自分で殻を作り休眠する状態のことで、この状態になるとマイナス30度でも死ぬことはありません。

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ものすごい生命力ですね。

 

どんなところで生活するの?

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今まで見てきたように、ハリガネムシは基本的には川の中、水の中で生きる生き物ということがわかります。

カゲロウなどの水生昆虫に取り込まれた後は、その水生昆虫がハリガネムシの幼虫を宿したまま成虫になり、陸に住むカマキリなどに食べられます。

ハリガネムシは、今度はカマキリなどの宿主に寄生して生きることになります。

ハリガネムシは、寄生すると2,3ヶ月で成虫になることがわかっています。しかも、カマキリがカゲロウなどをたくさん食べると、体内に寄生するのは一匹とは限りません。

 

複数のハリガネムシが、一匹のカマキリに寄生するということもありうるのです。

 

カマキリからたくさんのハリガネムシが、うねうねと出てくるのを見たことがある人もいるでしょう。

 

こうして、幼虫から成虫まで他の生物の中で生活していますが、結局は川へ帰るという習性があります。

 

そのため、寄生した動物である宿主を川へと操って水へと飛び込ませるのです。そして、ハリガネムシは川に戻り、そこで再び交尾、産卵をします。

 

ハリガネムシの役割って?

ハリガネムシがどうやって生まれて、どうやって生きていくかはわかりましたね。でも、ハリガネムシが自然界で果たす役割はあるのでしょうか。

 

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カマキリなどに寄生して生きるハリガネムシです。

 

寄生されたカマキリは、ハリガネムシが体から出るために水辺へと飛び込まされます。

 

得があるとは思えませんね。自分の意思と反して、水に入らざるを得なくなるのですから。

 

実は、神戸大学大学院理学研究科准教授の佐藤拓也さんたちの調査で、ハリガネムシが自然の生態系で大切な役割をしていることがわかったのです。

 

ハリガネムシが川に飛び込ませたカマキリなどの宿主が、イワナやアマゴなどの渓流に住むサケ科の魚類の貴重なエネルギー源になっているのです。

 

サケ科の魚類が年間に得る総エネルギー量の約6割が、秋の3ヶ月程で川に飛び込む寄生されたカマドウマで占められているという調査結果が出ています。

 

こんな調査をしている人たちがいるというのも驚きですが、ハリガネムシの習性が、これほど大きな影響があるというのも驚きですね。

 

ハリガネムシの出し方は?

カマキリがハリガネムシに寄生されたかどうか、見た目だけでは分かりません。

 

確認するには、カマキリからハリガネムシを故意に出す方法で試してみましょう。

 

カマキリからどうやってハリガネムシを出すか?

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カマキリからハリガネムシを出す方法は簡単です。

ハリガネムシを出す方法
  • カマキリのお尻を水の中に浸すだけです。

ハリガネムシは水を感知する生き物ですので、水につけるとにゅるにゅるとお尻から出てきます。

 

その様子は、虫などを見慣れていない人だと、少し気持ち悪いかもしれませんね。

 

ハリガネムシが出てきたら、カマキリを水から出してみると、ハリガネムシはさらに少し出ますが、水を感じなくなったら曲がったまま動かなくなります。

 

ここで注意しなくてはいけないことは、ハリガネムシを出したカマキリは死んでしまうということです。

 

寄生されている訳ですから、体内の大切な栄養素が奪われているのはもちろんのこと、生殖機能も奪われると言われています。ハリガネムシに寄生されたカマキリがメスだったら、その体内にある卵も食べてしまうそうです。

 

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何ともかわいそうなカマキリですね。

 

一度寄生されたら、逃れることができない一生なんです。

 

カマキリをペットとして飼っている人なら、カマキリは雑食なので人が食べるソーセージやヨーグルトなども食べるそうですから、そういうものを餌として与えるといいでしょうね。

 

虫などをあげてしまうと、ハリガネムシに寄生されるかもしれません。

 

ちなみにハラビロカマキリという種類が、最も寄生されやすいと言われています。

 

もし、これからカマキリを飼おうと思っている人は、この種類に注意して下さい。カマキリを飼いたいなら、ペットショップで購入して、餌も虫ではないものをあげるが賢明です。

 

ハリガネムシが出たカマキリはどうなる?

ハリガネムシに寄生されたカマキリは、ハリガネムシを出してしまうと数日後には死んでしまいます。

 

なぜ、すぐに死んでしまうかは解明されてませんが、寄生されたカマキリは自分が取り込んだ栄養も、体内にある卵もハリガネムシに摂られてしまうのですから、カマキリ自身に栄養は残ってません。

 

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そうしたことが大きな原因かもしれません。

 

寄生するハリガネムシは、宿主のカマキリをうまく利用しているのは事実ですね。ハリガネムシも寄生するわけですから、宿主がすぐに死んでしまっては困ります。

 

そこで、カマキリの心臓をすぐ食べることはしません。命とは関わらない、他の内蔵から食べていくのです。と言っている人もいますが、本当にそうだとしたら、ハリガネムシは頭の良い生物ですね。

 

動物が生き残るための本能によって身に付いた習性って、人間以上にすさまじいものを感じます。

 

寄生されたカマキリは、何だかかわいそうな一生ですね。

 

寄生されて、栄養素もハリガネムシに摂られてしまいます。また、寄生されたらカマキリは生殖機能も奪われてしまいます。そして、ハリガネムシに操られて水辺に連れて行かれて、魚に食べられます。

 

寄生されたが最後、ハリガネムシの言いなりのような形になってしまうのですね。

 

ただ、生態系の大切な一部分ですから、無駄な人生だったとは言えませんが。

 

ハリガネムシの洗脳説?

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ハリガネムシが宿主であるカマキリやコオロギを洗脳しているという説があります。

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洗脳とは、いったいどういうことなのでしょうか。

ハリガネムシはカマキリの中で成虫になり、その後カマキリから出て、水辺に戻ります。

 

その戻り方なのですが、カマキリを洗脳して川の中へ飛び込ませ、カマキリのお尻から出て水の中へ戻るのです。

川辺でお尻だけ水に浸かっているカマキリを見たことがある人もいるのではないでしょうか。

 

そのカマキリは、ハリガネムシが出た後のカマキリと言えます。

 

ハリガネムシは、宿主の脳内にある種のタンパク質を注入して洗脳しています。

 

そのタンパク質がどういうものか、先の神戸大学大学院の准教授である佐藤拓也さんたちが研究しています。

 

その研究ではコオロギを研究対象にしたそうですが、ハリガネムシに寄生されてないもの、寄生されてるもの、寄生されているけどまだ洗脳を受けてないもの、お尻からハリガネムシが出たあとのものを区別して調査しました。

 

その結果、まさにこれから水に飛び込もうとしているコオロギの頭の中にだけ、出ているタンパク質がいくつかあったということです。

それらのタンパク質には、神経の異常発達にかかわったり、場所認識にかかわったり、光応答にかかわったりするタンパク質と似ているものがあったのです。

 

また、それらのタンパク質の中にはハリガネムシがつくったと思われるものもあったということで、ハリガネムシがいかに高度な性能を持っているかがわかりますね。

 

佐藤さんたちの研究によって、ハリガネムシはまず宿主に異常行動を起こさせて、光応答の仕方を変えることで水辺に飛び込ませるという、2段階の操作をしているのではということが想像できるのです。

 

ハリガネムシはカマキリだけに寄生する?

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ハリガネムシは、カマキリにのみ寄生するとは限りません。

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他の生き物にも寄生します。

どんな生き物に寄生するのか、どうやって寄生するのでしょうか。

 

どうやってカマキリに寄生するのか?

ハリガネムシは水で生きる生き物です。カマキリは陸で生きる生き物です。

 

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どこに接点があるのでしょうか。

 

【カマキリに寄生するまで】

ハリガネムシは川で産卵すると、水生昆虫と呼ばれる水の中あるいは水面で生活する昆虫に取り込まれます。

水生昆虫には、私たちになじみ深いトンボ、ゲンジボタル、ゲンゴロウがいます。他にはカゲロウ、カワゲラなどもいます。

これらの水生昆虫が羽化して陸を飛び回り、カマキリやカマドウマなどに食べられることで、ハリガネムシは寄生することになるのです。

 

コオロギは草食性の昆虫ですね。その場合は、ハリガネムシが幼生やシストの状態で水辺の草に出されて、コオロギやバッタがその草を食べた場合、コオロギやバッタなどの草食性昆虫にも寄生されるということです。

 

ハリガネムシがなぜ寄生するのかは、寄生しないと生きていけないからとしかいいようがありません。

 

他の動物にも寄生する?

ハリガネムシは、カマキリだけでなくコオロギやバッタなどにも寄生することがわかりました。

 

また、魚やカエルにも寄生するというケースも見られます。それは、宿主であるカマキリなどが、ハリガネムシを出す前に魚やカエルに食べられてしまうからです。

 

ただ、魚やカエルの体内でハリガネムシが生きていけるということは確認されておらず、通常は死んでしまいます。

 

魚やカエルの体内には、ハリガネムシが生きていくのに必要な栄養素はないからです。

 

ペットにも寄生する?

ペットの猫や犬に寄生することはあるのでしょうか。

 

時々、飼っている猫や犬が虫で遊んでいるのを見たことありませんか。いくらペットでも動物としての本能はありますよね。

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その虫を食べてしまうこともあると思います。

それが、ハリガネムシに寄生されているカマキリだったらどうでしょう。

 

飼い主としては、そんなことを考えたらちょっとびっくり、怖くなってしまうかもしれませんね。

 

でも、安心して下さい。まず、ハリガネムシは哺乳類の動物の中では生きられないということがわかっています。

 

ハリガネムシは、昆虫の中でしか生きていけないのです。ですから、もし飼っている猫や犬がカマキリを食べてしまっても、ハリガネムシは体内で死んでしまいます。

 

犬や猫が後で吐き出すか、フンと一緒に出てくるかもしれません。

 

もしペットの犬や猫がカマキリで遊んでいたら、カマキリもかわいそうですので食べられる前に放してあげて下さい。

 

人にも寄生する?

それでは、ハリガネムシは人に寄生するのでしょうか。

 

人の爪の間から入って寄生するなんて、都市伝説もあるみたいですよ。

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これは、もう漫画の世界ですね。

爪の間ににゅるにゅると入っていく、細長いハリガネムシを想像するだけで、背筋がゾクゾクとしますよね。

 

でも、安心でして下さい。先ほど哺乳類には寄生しないと書いたように、人に寄生することはありません。

 

人に寄生したという例が報告されているのは事実なんですが、寄生したというより、川の水を飲んで偶発的にハリガネムシを食べることになってしまったという例ですね。

 

ハリガネムシは人の体の中では生きられませんし、ましてや悪さをするということもありませんので、体に害はないです。そのまま吐き出したり、便と一緒に出てくるということです。

 

ただ、ハリガネムシが口に入ると考えるだけでも、ちょっと気持ち悪いですよね。川に行ったら、むやみに川の水を飲むのはやめましょうね。

 

まとめ

今回は、普段目にすることのないハリガネムシを紹介しました。

他の生き物に寄生して生きるハリガネムシの一生ですが、生きていくためのメカニズムが驚くべきものだということがわかりましたね。

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こんな小さな虫にも、自然の驚異を感じます。

もしハリガネムシを見かけるようなことがあったら、こんなことにも思いを馳せてみてはいかがでしょう。

 

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